地球温暖化による森林保護の観点から生まれた、ケナフを使用し、水だけでできるパルプ製造機
私達の環境は、大地も人も酸化に向かっており、抗生物質と戦っている耐性菌は、スーパー病原菌として空気中や大地に潜み、私達に不安を与えている。
(財)地球環境財団、埼玉連絡事務所では彩の国「さいたまケナフ」の会があり、大地と大気汚染の改善のための活動を行っている。
「さいたまケナフの会」(会長 栄京子)というのはもともと土と食、私達の住む地球の土壌、環境に注目して、土の改良、生ごみを堆肥化することで、環境を守り、土のリサイクルをめざして始められた。
ケナフと言う植物は元来は熱帯、亜熱帯に自生する日本にはない植物である。東南アジア、インド、中国、アフリカ、カリブ海沿岸、米国南部等で栽培されている。ケナフは畑で栽培できるアオイ科ハイビスカス属の一年草で、
種を蒔いてから生ゴミ堆肥を好むケナフは5ヶ月という早さで生長し、下部が直径3-5センチ、高さが3-4メートルになる。9月ごろからオクラに似た黄色の花を咲かせる。
二酸化炭素を多く吸収することで地球の温暖化防止などに役立つだけでなく、布の原料、食材など幅広い用途がある。また最近は木材に変わる紙の原料としてその注目度が増している。
基本的にはほとんどの植物から紙を作ることができる。その中でケナフが注目されているのは、ケナフによるパルプ化は通常のパルプ化に必要な化学物質(毒性ソーダや漂白剤)を一切必要としないという点が大きい。
加えて、紙原料として質の高さにも定評がある。
平成2年度から3年度にかけて環境庁の委託を受けて「森林保全のためのケナフ等代替資源利用検討委員会」が設置された。日本政府は8年も前から、地球温室効果ガスの吸収源としてケナフの有用性に注目していた。
この委員会は紙パルプの木材を代替する植物資源としてのケナフをいろいろな分野から調査・研究を続けた。その結論は「米国農務省北部地域研究所」などが20数年にもわたってリサーチした究極の
ジャンボ草「ケナフ」を、中国での紙パルプ資源の改良に役立てることが最良、一石三鳥にも五鳥にもなりそうだとグローバルな事業開発プランとなった。
中国では、葦の他、わらや竹など非木材繊維で紙パルプ原料の7割以上を占めている。中国の紙消費は、1人あたり年50kg程度で日本の10分の1の水準である。
今後予測される紙需要の大きな伸びに森林資源を損なうことなく応えられるかが大きな課題です。中国では新たにケナフパルプ生産を企業化し紙の増産、パルプの日本向け輸出を図りたいとの構想を持ち、日本の協力が請われている。
(財)地球・人間環境フォーラム/ケナフ協議会は「中国ケナフパルプ生産企業化可能性調査」について入念に検討し、平成6年6月に調査報告書をまとめてGOサインが出された。
「さいたまケナフの会」(会長 栄京子氏)では一年草のケナフの栽培運動が起こり、非木材紙のパルプ化が推進されている。栽培の指導、ケナフ体験教室では手漉きのはがき、名刺、レポート用紙などへの加工体験ができる。
紙とは繊維から出来ているもので、バナナの皮、木綿の布、割り箸など繊維のあるものを使ってオリジナルな紙を創作できる。
【「紙造くん」(かみぞうくん)】
砥石が1分間に3000回転する超高速回転磨砕機です。砥石には繊維が毛羽立ちするように溝が彫られ、原料と水を投入する事によって、植物繊維の細胞がばらばらになり、紙にとっては不要なリグニン(木材の中に存在する不要物質)が分解される。
【紙造くんのできるまで】
栄さんは、簡単に出来ると書いてあるケナフの本や、ケナフ団体の普及の冊子などをみて、パルプ化に挑戦を試みるが、ケナフの靭皮は非常に硬く容易にパルプ化はできません。製紙企業が用いている薬剤を使用しなければ簡単にパルプ化にならないのです。
栄さんは言うまでもなく、この矛盾に妥協できず、とにかく、化学薬品を使わないでパルプ化をしましょうと公表してしまう。その根拠は、日本の和紙は楮(こうぞ)を代表にがんぴ、三椏(みつまた)と優秀な繊維の植物があり、
薬剤を使用しないで和紙として1,000年の長きを以って正倉院に保存されているからです。
さあ!公表してしまったから大変!ケナフは和紙ではないけど、とにかく、和紙のパルプ作りの方法でやってみようと。煮て、蒸して、叩いて、ダメ。今度は、圧力釜にかけて、アルカリ度の高い木灰を入れて叩いてみる、ダメ、次は、微生物を入れて
繊維を少しとろけさせて見るー「うん」いくらかいける。でも出来上がりはたたみいわしの様で字はかけない。じゃあ叩き方がたりないのかと、木槌でひたすら叩く。ー「うーん」この作業はヒーリング効果がありそうかな?ー
でも字がかけないのは紙ではない。・・・・・作業を始めて約3ヶ月・・・・・ケナフは森を守る紙?・・・・・嘘だー・・・・・かなり危ない状況に陥った。夜中に納戸で毛布をかぶり(消音のため)木槌でとんとんなんて可愛い音ではない。
パルプ化にする叩解作業は「ゴンゴン」夜、取り付かれたようにひたすら叩く。叩く。その間、森本先生(元大蔵省の造幣局長)に指示を仰ぐ。ケナフをパルプ化するのは不適格と言う結論がでる。
しかし、それでも諦めきれず、最後の手段に、今度は人力から機械にともちつき機の製造会社に何度も行き、高額な業務用餅つき機を購入。今度は機械で毎日ぺったんぺったんこりゃ楽だ。のつもりがまたまた、失敗。この間1年が過ぎる。
ある時、栄さんは石臼の原理を見て、石臼が乾物を粉にする昔からの粉ひき、これを繊維に活用できないかどうか、という発送から石臼に溝があったら繊維も引けるのではないかという事を思い立った。
熱処理や薬品を必要としない「紙造くん」は漂白の必要がない。繊維とは本来白いものであるので、熱処理をすると、茶色くなり、木材紙パルプ化の工程では漂白剤を使用して白くしているのが現在の情況である。
化学薬品を使わず、熱処理もしない「紙造くん」は繊維本来の白さは出るが、植物のアクがあるので若干アイボリー色の味わいある紙となる。
この機械は繊維があれば、何でも紙になる。割り箸、布からでもオリジナルの紙を作る事が出来る。バナナの繊維も良質の紙となる。
外務省からの依頼により、バナナの生産国カリブ諸国のハイチ・じゃまいかい他2カ国でこのプロジェクトがスタートし、今までゴミとして扱われていたバナナの茎から立派な紙がうまれることとなる。
認字率の低いハイチではこの紙で教科書を作り、認字率の向上に役立てたいと期待されている。
【栄京子さん「土と食の会・さいたまケナフの会」会長】
1997年、会員有志で、彩の国「さいたまケナフ」の会発足。
ケナフの種の配布と栽培、紙漉きなどを通し環境問題と取り組み、わら、桑、竹などを入れたオリジナル紙を完成させる。2001年9月にはカリブ諸国のハイチへ無薬品のパルプ化機械「紙造くん」の設置、
と非木材紙普及活動の一環としてゴミと扱われているバナナの茎を利用してバナナペーパー作成に力を注いだ。
今回このノンケミカル(水だけを使用する)パルプ製造機械が外務省ODA(政府開発援助)、JICAノプロジェクトとして、ハイチ、ジャマイカ、セントルシア、セントビンセントに設置された。
外務省(ハイチ室)は世界でも有数の貧困の国ハイチでこのバナナパルプを使って認字率の低い教育の為に教科書を作り、更にこのバナナの紙を非木材紙として、森を守る為に世人々が使えば産業としても役立つと極めて協力的だ。
栄さんは今後、ハイチその他のカリブ諸国の発展にこの機械が貢献できることを望んでいる。もちろんこの援助を機に多くのアメリカ企業、環境団体、ベンチャー企業が機械に興味を持ち、実際に使用するとなれば
環境重視の産業発展を念頭に置いた機械の活躍の場は更に広がり、多くの期待が寄せられることになるであろう。実際、栄さんは外務省から、アメリカにはハイチからのボートピープル「ハイチアン」の成功者がおり、
この情報を知れば祖国ハイチの為に協力者が現れるのではということを聞いている。更に、「地球温暖化による森林保護の観点から、この機械が非木材紙のパイオニアとして世界に広がって欲しい」と栄さんと会が抱く「紙造くん」に対する大きな夢を語ってくれた。
(古川みずゑ、コアみどり)
2001年10月 日本語ビジネス総合誌 BZ JAPAN 北米報知 2001年10月号